近年の猛暑の影響により、厚生労働省によると2年連続で職場での熱中症によって年間30人以上が亡くなっています。
熱中症は死亡災害に至る割合が他の災害の約5~6倍と言われており、また職場で熱中症で亡くなった方の約7割は屋外作業であったことが分かっています。
そうした中で職場での熱中症を防ぐために改正労働安全衛生規則が施行され、企業などの事業者に対して熱中症対策を行うことが2025年6月1日から義務付けられました。
(参考:厚生労働省「職場における熱中症対策の義務化について」)

熱中症対策義務化の目的
今回の改正労働安全衛生規則の施行の目的は、職場における熱中症の重症化の防止です。
厚生労働省によると、2024年の全国の職場での熱中症による死傷者は、統計を取り始めてから最も多い1257人に上り、このうち亡くなった人は31人で、3年連続で30人以上となっています。近年の気候変動の影響により更なる熱中症による死亡災害の増加が考えられています。
熱中症による死亡災害のほとんどが発見の遅れや異常時の対応の不備などによる「初期症状の放置・対応の遅れ」が原因となっており、現場において死亡に至らせない(重篤化させない)ための適切な対策が必要です。
義務化された3つの対応
企業などの事業者に対して熱中症があった際に対応できるよう、以下の3点が義務化されました。
- 熱中症のおそれがある人の早期発見・報告体制の作成
- 重篤化防止のための応急処置などの手順作成
- 上記の対応を関係者に周知すること
この改正規則では全ての企業に対して労働者への熱中症対策を義務付けており、
企業が熱中症対策を適正に行わなかった場合には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
熱中症対策の対象となる条件
熱中症対策が必要な条件として以下の2つの条件が定められています。
- WBGT値(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下での作業
- 連続1時間以上または1日4時間を超える作業
また、上記に該当しない作業や環境であっても、熱中症リスクが高まると考えられる場合には同様の措置が推奨されています。
製造現場における熱中症対策の取り組み
空調完備の工場も少なくはありませんが、作業内容や取り扱う製品によって屋外での作業や高温環境での作業が発生することがあります。
そうした中で製造現場では下記のような取り組みを行っている工場もあります。
- 水分補給のため休憩回数の増加
- 空調服・ネッククーラーの支給
- スポットクーラーの設置
- スポーツドリンクや塩分タブレットの支給
熱中症というと一般的に屋外作業で発生することが多いと思われがちですが、厚生労働省の発表した熱中症の業種別発生状況によると製造業は建設業に次いで2番目に熱中症が発生しやすい業種となっています。
(参考:厚生労働省「職場でおこる熱中症」)
企業側の対策はもちろんですが、労働者も率先して熱中症対策に取り組みましょう。
まとめ
職場での熱中症対策が義務化に!目的や対応とは?
近年の気候変動による高温に伴う熱中症での死傷者が増えています。
そうした中で2025年6月1日より企業などの事業者に対して以下の3点が義務化されました。
- 熱中症のおそれがある人の早期発見・報告体制の作成
- 重篤化防止のための応急処置などの手順作成
- 上記の対応を関係者に周知すること
今回の施行をきっかけに、企業が取り組みを見直すことで安全で快適な作業環境が維持されることが期待されます。
