千年以上にわたり日本の都があった京都は、世界でも有数の観光都市として毎年多くの観光客が訪れます。このことから京都は観光業が中心というイメージが強い方が多いかもしれません。
実は京都は付加価値構成比という指標でみると、製造業が22%と約1/5を占めています。(※2011年調査時点)
京都の製造業は他県とは異なり、長い歴史の中で伝統技術が受け継がれる一方で、伝統技術から派生した先端技術も有しています。
多様性豊かな業種が根付く京都
京都の製造業の特徴は、1つの産業に偏りがない点。飲料・たばこ・飼料製造業、食料品製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業などバランスよく様々な産業が京都に根付いています。
このように多様な業界が独自の産業を確立する京都では、異業種の知恵や技術の接触機会を自社事業の周辺に容易に獲得できるからだと考えられています。そのため他企業と連携することで、自社事業だけでは創造することができない新製品や最新技術の開発に取り組める環境が京都にはあります。
(出典:独立行政法人 日本貿易振興機構「世界で評価される京都企業」、京都商工会議所「第2章 京都産業の優位性分析」)
世界に名をはせる京都の匠の技
京都では、世界に誇れる「匠の技」と言われる伝統工業品が数多く存在します。
京都の伝統工芸品は下記に紹介する通り、非常にたくさんの種類があります。
例
- 染織
西陣織・京友禅・京黒紋付染・京房ひも・京小紋 など - 諸工芸
京仏壇・京漆器・京扇子・清水焼・京焼・京うちわ・数珠・京七宝 など - 小規模産地
菓子木型・かつら・京金網・唐紙・京瓦・京和傘・三味線・尺八 など - 食品
清酒・京菓子・京漬物・京料理 など
京都の伝統工芸産業が盛んということは、従業者数を⽤いた数字からも知ることができます。
京都府政策企画部企画統計課が発表したデータによると、織物⼿加⼯染⾊整理業や絹・人絹織物業、うちわ・扇子・ちょうちん製造業など和装に関する産業の数値は、どれも全国⽔準を⼤きく上回ります。京都では、このような伝統工業品の製造に全国と比較して特化していることがうかがえます。
(出典:京都市産業観光局クリエイティブ産業振興室「京都市の伝統産業一覧」、京都府「統計でみる京都のすがた2020」)
世界に誇る京都のハイテク産業
長い歴史を持ち観光都市でもある京都の製造業は、伝統工芸を扱う老舗企業が中心と思われがち。しかし実は京都には、新設間もないベンチャー企業や世界でも名を知られている多くのトップクラス企業が会社を構えています。
多くの方が社名を知っている世界的なゲーム機メーカーの任天堂や、携帯電話などの電子・情報通信機器を扱う京セラをはじめ、村田製作所、村田機械、島津製作所などの企業は、世界で活躍する京都のハイテク企業の一部です。
それぞれの企業は、昔から受け継がれてきた下記に紹介する京都の伝統製造の技術・ノウハウなどをベースに、独自に先鋭化を図り発展してきました。
- 京セラ・村田製作所:清水焼(京焼)
- 村田機械:西陣織機
- 島津製作所:仏具
- 任天堂:花札
一方で京都は国内屈指の学問の街としても知られています。京都大学をはじめ、市内には大学や短大が40近くも集約されています。そのため京都は他の地域と比較して産学連携が活発です。企業同士の合同開発も盛んに行われており、そのような風土がさらに京都の製造業を活性化させているようです。
このような地域性の背景もあり、京都では業界でもトップクラスの先端技術の開発や研究を行う企業が数多く発展を遂げることとなりました。
まとめ
匠の技と先端技術が融合するモノづくり都市「京都」についてご紹介!
京都には昔ながらの伝統技術が数多くある一方で、伝統技術から派生した先端技術も有しています。そんな京都の産業の特徴は、多様な業種がその土地に根付いている点。
そのため、他業界との交流の中で自社事業の発想から創造することができない新製品や最新技術の開発が行われることもあるようです。さらに、京都は学問領域にも注力。優秀な学生が育つ場を作ると共に、大学などの学術機関と共同し最先端の研究・開発を行う環境が整えられています。