政府は2024年度の全国の最低賃金の目安を全国平均で50円引き上げ、1054円とすることが決定しました。
これは過去最高の引き上げ額であり、引き上げ率に換算すると5.0%になります。
今回の最低賃金の引き上げでの最も時給が高い都道府県は1位が東京都1,163円、2位が神奈川県1,162円、3位が大阪府1,114円となりました。
全国平均は1055円となり、中でも一番引き上げ金額が高かったのは徳島県の84円でした。
2009年の全国平均最低賃金は、713円。ここ15年で加速的に引き上げが続いている最低賃金ですが、ふと「最低賃金ってなぜどんどんあがっているの?」という疑問が出てくる方もいるのではないでしょうか。
今回は、少し難しいですが知っておきたい”最低賃金の引き上げ”について解説します!
出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
最低賃金制度の目的
皆さんはなぜ最低賃金が定められているか、考えたことはありますか?
国が定める最低賃金法において、最低賃金制度は以下の目的で施行しているとされています。
この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
出典引用:厚生労働省「最低賃金制度の意義・役割について」
このように最低ラインの生活保障・労働条件の保証、また所得拡大により消費を後押しすることで日本の経済の発展を目的としているのが”最低賃金制度”です。
最低賃金値上げが企業に与える影響
最低賃金が引き上げとなると、単純に企業としての人件費が上乗せされる形となり、その分をどこかで削る方針の企業も中にはあると思います。そのための施策として、人工知能(AI)の活用や業務効率化を進めるシステムの導入がされつつあります。またその動きは今後さらに活性化する可能性があります。
そうすると、企業が求める人材の需要が変化し、たくさんの人の働き方に変化をもたらすと考えられています。
最低賃金値上げによる雇用者側のメリット・デメリット
雇用者側(企業に雇われてはたらく人)にとっては、うれしいことばかりのように感じる最低賃金の値上げですが、最低賃金に伴うデメリットもしっかりと把握しておくことをオススメします。
続けて最低賃金値上げに伴う、雇用者側のメリット・デメリットをご紹介します。
最低賃金値上げによる雇用者側のメリット
- 最低賃金値上げにより、全体の時給が上がる傾向にある
- 効率よく働いていただくために、今まで以上に積極的にスキルアップができる研修や勉強会などに参加ができる可能性がある
最低賃金値上げによる雇用者側のデメリット
- 人件費削減として勤務時間や残業時間を減らされる可能性がある
- 非正規雇用の採用を打ち切る企業が出てくる可能性がある
- 生産性を高めるため、スキルや経験、即戦略になるかどうかを重視する採用になる可能性がある
ご覧のように、最低賃金の値上げはメリットにもデメリットにもなり得ます。今後のアルバイトやパート・派遣社員などの非正規雇用の採用にも変化が現れる可能性がありますので、最低賃金の値上げに伴う影響についても知っておくようにしましょう。
派遣社員に最低賃金はどう適応される?
派遣社員ももちろん、最低賃金制度の保護対象に該当します。ただし、パートやアルバイトとは異なり、派遣社員は派遣元の人材派遣会社と雇用契約を結びます。そのため、派遣社員の最低賃金は、派遣先企業の所在地の最低賃金が適用されます。
例えば登録先の事業所が大阪であっても、職場(実際に働く場所)が兵庫県の場合、兵庫県の最低賃金が適応されます。
最低賃金法第4条では、「労働者に対して最低賃金以上の賃金を支払うこと」が義務付けられています。
万が一、最低賃金以下の時給で働いている場合は、すぐに会社に確認するか給与明細を持参して労働基準監督署に相談して下さい。
ご自身の生活を守るためにも、適応されている最低賃金について確認をしておくことが大切ですね。
まとめ
最低賃金は何故どんどん上がっているの?上がることのメリット・デメリットは?
最低賃金の引き上げの背景には、賃上げによる所得拡大により、消費を後押しすることで日本の経済を発展させるという最大の目的があります。また同時に労働者の最低ラインの生活保障・労働条件の保証が最低賃金によってなされます。
また最低賃金法は、派遣社員として既に働く方、新しく派遣社員として働くことを検討されている方にとっても、重要な話となります。特に覚えて頂きたいことが、派遣社員の最低賃金は、派遣先企業の所在地の最低賃金が適用されること。
万が一派遣先の所在地においての最低賃金が、ご自身の給与より下回っている場合は、早急に会社に確認するか、労働基準監督署に相談しに行きましょう。
「最低賃金=給与が上がる」だけとお考えの方も多いかもしれませんが、実は、日本経済や、今後のご自身の働き方など様々な場面に影響を及ぼすものと言われています。
